混沌私見雑記

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音楽家に音楽理論は必要か?

どうも、いろんなバンドでドラムを叩いている無職です。

こんなこと言うのもなんですが、ぼくは自分の演奏技術にはクソほど自信がありません。人並みに叩けるくらいには練習したけど、まあ人並み、みたいな。別に一目置かれるわけではない、みたいな。そんなドラムです。
そんなぼくにすら、みんなドラムのサポートを頼んできます。なぜならドラマーは人口が少ない(かつその中でも気軽に頼める人ってそんなにいない)から。下手な奴にでも声がかかるということです。

そんなわけで多くのバンドでドラムを叩いてきたぼくですが、たくさんの人とセッションとして知ったことは「あ、音楽理論がわからなくてもバンドやってる人っていっぱいいるんだ」ってことです。
音楽理論って言ってもあれですよ。オーケストレーションがどうポリフォニーがどうとか難しい話ではなく、基本的な五線譜が読めない人が多いって話です。

目次

 

バンドマン、楽譜読めない奴多すぎ問題

ぼくは中学校で吹奏楽部に入部して、高校3年生までみっちりやっていた。パーカッションを担当していたため、その流れでドラムの活動している。なんとなく上京してしまい、なんとなく「ドラム叩けるしバンドでもやってみるか」という流れ。

とはいえ、吹奏楽部時代はドラムについて誰が教えてくれるわけでもなく(先輩もその上の先輩もその上の先輩もちゃんとしたドラムを習っていなかったから、必然ぼくも習っていなかったわけ。ぼくが吹奏楽部時代に叩いていたのはあくまでも「吹奏楽のパーカッションにおけるドラム」って感じ)。
吹奏楽部時代のドラムの経験などはロックやポップスの「ちゃんとしたドラム」を演奏するにあたってはなんの役にも立たず、プロのレッスンに通いゼロから学び直した……。

吹奏楽で得たドラムの経験値はほとんどゼロに近かった(ショックだったよ)。
だけど培えたものはあったのだ。ドラムのスキルではなく、「音楽への理解」である!
クラシックルーツの器楽合奏を経験することによって、楽譜が読めるようになり、諸々の知識がつき、様々なジャンルの音楽に触れることができた。幼少からピアノをやっていたとかそういうこともなく、なんなら和声(コード理論)についてもよくわかっていないので、別にアカデミック人間なわけではないのだが、ト音もヘ音も読めるし(スラスラとは読めないけど)、強弱記号も速度記号も発想記号も反復記号も省略記号もわかる。いや忘れたことも多いけども。

だから、いっちょロックバンドでドラムをやってみようかと思い立ったのである。「楽譜が読める」という土台があったから。ていうか音楽やるにあたって楽譜が読めるのってあたりまえじゃん!? あたりまえじゃん……?

そしていざこちらの世界へ踏みこんで出会ったのは、「拍子」「小節」の概念もわからずにギターをかき鳴らす人間たちだった。……え? なんで楽器やろうと思ったの。なんでそれなりに弾けてるの……?

そう、これはたまたま学生時代に吹奏楽部(笑)に入ったおかげでたまた楽器が読めるだけのぼくがえらそうに講釈たれる記事です。

 

いきなり結論ですが

結論から先に申し上げますと
音楽理論は習得すべきか?」に対する答えは「人による」
んだと思います。

プロでも楽譜が読めない人ってけっこういるらしいです。
ビートルズ全員楽譜が読めないってマジ? マイケル・ジャクソンもかよ!
なんなんだよ。楽譜読めなくてもいいんじゃねーか!
うん、いいと思う。天才とかスターとかなら、いいと思う。パンクバンドじゃないかぎり、楽譜は読めたほうがいいし音楽理論を勉強したほうがいい。

「楽譜が読めないからこそ、自由な発想の曲を作れる」と主張する人がいますが、ぼくはそんなものは一切ないと思っている。太字でもう一回書くけど、一切ない

なぜなら、そう主張する彼らも、音楽理論から大きく逸脱した曲を書いていないから。
書けないんですよ、理論から逸脱した曲なんて。
「気持ちのいい音、気持ちの悪い音」っていうのがあるわけだから、どうしても自然とセオリー通り、ある程度のルールに沿った曲が構築される。まあ、コーラスやフレーズにおいて音の誤りが生じたりするけど……。

「おれは音楽理論を修めてないからこんな曲が作れるんだ。音楽理論なんてむしろ足枷」と自信満々に言う人、今まで8人くらい会ったことがあるんだけど、いやいや自分の無学をそんなふうに正当化するのは愚行でしょ。恥を知れ恥を。

ちなみにぼくは詳しい理論わからんので常に恥じてます。気づきましたか、これは自戒の記事でもあります。

先ほども申し上げました通り、天才かスターなら楽譜が読めなくてもいいと思います。

天才は「異様に音感がよく」て「記憶力が抜群」な人。
スターは「その人のキャラクターだけで仕事がもらえる」人。

そんな自信、あります? いやあるならいいんですけど、ないなら音楽理論ガチガチに修めるまでしなくても、五線譜くらいは読めたほうがいいんじゃないかなあと思う。

あ、パンクバンドに限っては楽譜読めなくていいです。パンクバンドに限っては楽譜読めないからこその楽曲やプレイがあると思います。いやこれまじめな話、本気で思ってますよ。でもポストパンクやってる奴は読めろ。

「おれは楽譜なんて読めなくても今までやれてきたんですけど。じゃあ楽譜が読めたらどんなメリットがあるのよ?」という話ですが、いーーーーーーっぱいあるよ!!!!!!

楽譜が読めると

①意思の疎通がスムーズになる

楽譜が読めないのに音楽をやるというのは、「現地語を話せないのに外国に住む」のと同じことである。と思うのだがどうだろうか。

海外旅行、ぼくは行ったことがないんだけど、片言の英語とボディランゲージとノリと勢いと雑な勘で乗り切れるらしいね。
「楽譜読めないけどバンドやってるぜ!」という人はそれと一緒。
現段階で片言の英語とボディランゲージとノリと勢いと雑な勘で乗り切れているのは、他のメンバーが正しい道に導いているおかげ、もしくはボディランゲージとノリと勢いと雑な勘で乗り切っている奴限定でコミューンを形成してしまったか。つまり甘えでは!?

短期滞在ならそれでもいいかもしれないけどさ、ずっと音楽やっていきたいわけじゃん。今までずっとやってきたわけじゃん。お前イタリアに5年住むことを強いられたらちょっとはイタリア語勉強するだろうが。そういうことだよ。

楽譜が読める(用語が理解できる)と「あそこの8分音符で刻んでいるところさ〜」「サビのアウフタクトさ〜」「2拍3連のキメからブレイクするところさ〜」と会話がスムーズになる。
楽譜が読めない人には「あそこのダダダッってところさ、え? いや違うよ、あのBメロのところだよ」などと伝えなければいけない。スマートじゃない。

ここは「フォルテ(強奏)でいこう」とか「ここはディミヌエンド(だんだん弱く)ね」とかは、まだ簡単に言葉を置き換えることができるんですが、「このフレーズはスラーで」とか「テヌート気味で」とか、そういったアーティキュレーションのニュアンスは、わからない人には伝えづらい! 「なんかこう、流れるように弾いて」だと齟齬が生じることが多い。「スラー」という言葉・概念を理解共有していると、それがひとつの指標になる。これ便利じゃないですか?

なにより、共通の譜面を見ているときのコミュニケーションのスムーズさって言ったら、もうね。

ところで「小節」「拍」「拍子」の概念が理解できない人間はマジでやばいので、早急になんとかするか人との共同作業やめろ。
わかっていない人、けっこういる。これはもうマジで意思の疎通に悩む。
「●小節休みね」などと言っても通じない。やばい。「●拍分休みね」と言っても通じない。やばい。小節、拍、拍子だけはわかってくれ、頼む。
頭の中で楽曲イメージどうなってるんだ。雅楽の楽譜みたいになってんのか。

そんな人でもみんな4/4拍子で偶数フレーズ単位で進む曲を自然と作るのはすごいと思う。DNAに「これが音楽において自然な形」として刻まれているのだろうか。
音楽理論がからっきしの奴でも『4/4拍子で偶数フレーズ単位で進む曲を自然と作る』神秘」についてどこかの大学機関で研究したりしてませんか。
まあそういう奴は自分の中だけで完結している謎の変拍子を時々ねじこんできたりするけどね。やめてほしい。

あ、パンクバンドは楽譜的な意思疎通より野生の勘でライブしたほうがかっこいいと思う。

②仕事が増える

スターならこんなこと気にしなくていいんですけどね。
楽譜が読めない奴には、まず単体で楽器の演奏依頼はない! と思うんだけどどうなんだろ。

もしあなたのバンドが人気になってデビューできたとする。しかし解散してしまった!
作詞作曲ができるボーカルは、まだ生きていけるかもしれない。でも、楽譜が読めない、とりわけ華のあるプレイができるわけではないギターのあなたは? 即死っしょ。

ジミ・ヘンドリックスが楽譜読めないのにスターになれたのは、天才でスター気質だったからだよ! KenKenもそう! みんな天才でスターだから金もらえるんだよ!
あなたは果たして天才だろうか? スターだろうか?

ちなみに桑田佳祐吉田美和は楽譜が読めないらしい。まあボーカルはともかく、楽器専門の人は楽譜読めたほうがよさそうだよ。だって楽器専門にしてるわけだし……。てか音楽業界は一定のレベル以上のステージになると全部五線譜でわたされますからね。コードがわかるだけじゃダメだよ。

ちなみにパンクバンドは解散すると仕事がない。


③プレイが緻密になる

常に自分のプレイを楽譜として脳に投影すると、緻密な演奏が可能となる。
「パン」というたった一発の音を「4分音符のイメージ」で演奏するのか「8分音符のイメージ」で演奏するのか「16分音符のイメージ」で演奏するのかで、まったく出音が変わってくる。

そしてこれをバンドで共有できるとバンド全体の演奏が緻密となる。「ブレイク前最後の音は8分音符分で」と共有するだけで、アタックとリリースが変わってくるはずだ。

音楽理論を修めていないからこそ、直感で野生的なプレイができるのよ!」と主張する人もいますが、それをやって楽しいのは自分たちだけかもしれないということを考えたほうがいいかも。
音楽理論を熟知している人でも野生的なプレイはできるし、なんならそういう人たちの野生的なプレイはもっとかっこいいと思うよ。

まあパンクバンドに緻密さはいらないけどね。雑味があるほうがかっこいいよ!

 

④楽曲の幅、プレイの幅が広がる

「おれは音楽理論を修めてないからこそ、こんな曲が作れるんだ・こんなプレイができるんだ」という人たっっっっっっくさんいますが、マジで逆だと思う。

先述したけど、「音楽知識がない奴でも『4/4拍子で偶数フレーズ単位で進む曲』を自然と作」ってしまうわけで。んでもって、できる曲は調性音楽(キーのある音楽)でしょ。そしてモードではなくコード音楽なわけだ。結局「普通の楽曲」に落ち着いてるんだよ。

絶対に音楽知識を知っていたほうが奇抜な曲が作れると断言できる。楽譜が読めないのにウルトラ変拍子の楽曲を書いてしまう高橋國光みたいな例外は除く。

あとみなさんがよく言う「これは音楽理論の常識にとらわれない発想だからこそ書けた曲だな・できたプレイだな」ってやつは、たぶんそれはあなたが楽典修めていても発想できたはず。もしくは楽典修めていたら、発想したとしても、こりゃ不適切だなあ採用できんなあと唾棄したはず。

みなさんは現代音楽を聴いたことあるだろうか。あれよ、オーケストラとかピアノとかの現代音楽。


【本編】2019年度全日本吹奏楽コンクール課題曲 Ⅴ ビスマス・サイケデリアI

無調で変拍子バリバリ。めまぐるしい展開。基本的にマイナードロドロ、突然のメジャーファンファーレ、でも違和感ない。特殊奏法、特殊打楽器。奇抜でしょ。こんなの、調性音楽を主とする作曲家以上に音楽理論を研究していないと作れない。

佐村河内守ゴーストライターとして一躍時の人となった新垣隆の専門は現代音楽なのである。彼は佐村河内守の依頼で、専門外でありながらも壮大でロマンチックな調性音楽の交響曲を書いた。書けたのである。書けるのである。
氏は「あの程度の曲、現代音楽やってる人は誰でも書けるよ(意訳)」と語っている。マジやべー。
氏が「吹奏楽編成だったら曲想の指定はしないよ」と言われて書いた『吹奏楽のための小品』は「やっぱりこういうの好きなんだろうなあ」というはっちゃけた現代音楽風味の楽曲である。

現代音楽はハチャメチャやってるように聴こえるが、どれもこれも学のある人がとても緻密に構成した楽曲なのだ。三善晃を聴け三善晃を。『管弦楽のための協奏曲』を聴け。『祝典序曲』を聴け。

なにが言いたいかっていうと、知識があればあるほどやれることは増える。知識がなければ結局セオリーに沿った普通のことしかできない

「楽譜が読めないからこそ、この楽曲の自由度じゃー!」とか言っているのは喧嘩の強いヤンキーみたいなもん。「全力無双激烈拳!」つって手足ジタバタしてるだけ。武道極めた人の正拳突きでワンパンよ。そして武道極めた人は武道を極めたからこそ意味のある奇妙な動きもできたりする(よね?)。

中村勘三郎は言った……「型があるから型破り。型が無ければ、それは形無し」と。そういうことだよ。土方歳三はいろんな流派の技を使って、奇抜な発想で戦場を縦横無尽に駆け回ったらしいけど、それは天才って言うの。高橋國光は特別なの。

あ、パンクバンドは形無しなのが逆にかっこいいと思う。

 

まとめ

いや別にえらそうにするつもりはまったくないんです。ぼくも五線譜が読める程度で、詳しい理論なんて知らないんです。イキリオタクなんて揶揄しないでください。ここまで読んでくれてありがとね。6000文字も書いたらしいわ。

「楽譜読めないほうがいい」「理論修めないほうがいい」「人に習うつもりはない」と高らかに言う人が多いものだから、アンチテーゼとしての記事です。いや嘘です、そういった人たちを否定することはしないですよ本当に。殴らないでください。

ガチガチに理論修めるまでしなくても、五線譜が読めるだけでまったく世界が変わってくるはず。「音楽理論がわからないからこそ見える世界」はない。もう断言しちゃうけど、そんなものはない。それは逃げ。甘え。

ただ、ぼくの周りで「音楽理論なんてしゃらくせえ」と感覚でやっている人たちは、みーーーーーんな天才気質なところがある。これは本当に。マジでずるい。
みんなめっちゃいい曲書くし、小説とか読まないくせにとても文学的な歌詞を書けたりする。マジでなんなの? ムカついてきた。嫉妬の炎で燃えてきた。クソクソクソクソクソクソクソクソク

こういうこと考えるとやっぱり音楽理論を学ぶか否かは「人による」んだろうな〜。天才は「感覚でできちゃう」から必要ないんだろう。
クソクソクソ! 自分の才に甘えやがって! 気づきましたか。これは嫉妬の記事です。でも甘えないで勉強したほうがもっとすごい音楽できるようになると思うよ、本当に。

最後にまとめておきますね。

音楽理論を知っているととても便利。
・無学は逆にできることの幅を狭める。
・マジの天才は音楽理論なんか学ばなくても大丈夫。
・パンクバンドに音楽理論はいらねえ。

以上です。ぼくもこんな記事を書いたからにはちゃんと音楽理論を勉強しようかなと思います……。

今日はこれでおしまい。